さて、先回の琺瑯彩に続き、今日は粉彩についてご紹介したいと思います。
(粉彩の茶杯。優しい色合いが素敵。)
粉彩とは、琺瑯彩の後に生まれた技法で、康熙五彩の基礎の上に琺瑯彩技法の影響を受けて生まれた技法です。
粉彩が生まれた具体的な時期は清の康熙52年以後(1713)ですが、康熙帝時代の粉彩の絵は非常にシンプルで、草花が主です。
しかし、雝正(ヨウセイ)時代(1723-1735)になると、形も色も豊富で完璧な段階に到達し、乾隆時代(1735-1795)になると乾隆帝が好んだ豪華な美しさに符合する物ができ、粉彩の黄金時代となりました。
さて、歴史的背景はここまでにして、技法の説明を少し。
先ほど触れたように、粉彩は琺瑯彩の影響を受けてできた技法なので、“琺瑯彩の妹”と呼ばれるほど琺瑯彩に本当によく似ています。
表現テーマや表現手法からの観点から、同じ分類にされることもしばしばですし、見間違えることもあるほどですが、やはり区別できる違いがあります。
違いのいくつかを簡単にご説明したいと思います。
最大の違いは材料の違いです。
琺瑯彩料は粉彩料より流動性があるので、琺瑯彩で描かれた花びらや葉びらの輪郭ははっきりしています。
それに対し、粉彩の輪郭はいくらかぼんやりしています。
粉潤の美とも表現されます。
それで粉彩とよばれるようになったようです。
(上の写真は粉彩。柔らかい優しい色が特徴)
そして、次に、色の豊富さの違いもあります。
粉彩は五彩より色彩豊かですが、琺瑯彩ほど豊富ではありません。
それで簡単に言うと、粉彩は柔らかい淡い美しさがあり、琺瑯彩は色鮮やかでパッと明るく華やかな美しさがあります。
そして別の違いは、琺瑯彩釉は厚い層で立体感があり、指で触ると凹凸があります。
粉彩釉は薄い層で平坦、触っても凹凸はあまり感じません。
(上の写真は琺瑯彩。色鮮やかで立体感があります。)
(こちらは粉彩。琺瑯彩に比べて凹凸はそれほどありません。色彩も穏やかです。)
それで、触ってみて凹凸を感じるものは琺瑯彩、それほど立体感を感じないものは粉彩ということになります。
そしてさらに、琺瑯彩はガラス質感が強く、それゆえに釉薬が分厚くなっている部分に氷裂紋が見られます。
それに対して粉彩には氷裂紋はありません。
さらに、マニアックな知識としては、粉彩には、制作してから何十年か経つと、蛤光現象という七光りのようにみえる現象が、絵付けの上や、周りにみられるようになりますが、琺瑯彩には見られないといった違いもあります。
どれも使用されている材料に違いがあるためです。
しかし、蛤光現象に関する違いは骨董品で見分けるのに役立つ知識ですが、現代の粉彩技術で描かれた物に当てはまるかは疑問です。
さて、ここまでで、琺瑯彩と粉彩の違いをいくつかご紹介できました。
そこまで厳密に区別しなくてもいいようにも思いますが、このような違いを知っているだけでまた茶器の楽しみ方も違ってくると思います。
粉彩、琺瑯彩の茶器を手にされた時は是非、色調の違い、立体感、氷裂紋の有無などを見比べてみてください。
長年愛用している物でも、今までと違う新しい何かが見えてくるかもしれません。
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